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あれから10年

2008年8月、不動産バブルがはじけ経済はリーマンショックで寸断され、未回収金が山となり、起こした裁判が終わり、失意の中新しい分野を開拓した。
あれから10年目の秋が来た。
切ない金木犀の香りと共に。

2020年に向かって建築業界は気がふれた様に突っ走っている。
少しは恩恵が合ったのだろうか。先月も過去最高を更新した。
疲れた、飽きた、こんなこと絶対に今まで無かったけど、もう沢山とまで思った。
体力が落ち、回復に時間がかかる。
夜も更けてさあ終わった帰ろうと思って明日のスケジュール表をWEBで確認する。今日中にやっておくべき事が2つ残っていた。
事務所の小さなキッチンの前の丸椅子に思わず座り込む。
手で頭を抱え、泣きたくなった。もう走れない、そうつぶやく。

こんなこと無かった、大好きな建築で生計を立てている。
それだけでも幸運なのに。
男には時々全てを捨てたいと思うときがある。
一切のしがらみを捨て自由に生きたい。体中、心の奥まで支配されるこの縛りから逃れたい。

いつもの電車を逃れ反対側の空いている下り路線に乗って逃げ出したい。
でもその先にあるものは嫌というほど自分で分かっている。
だからとぼとぼと前を向いて走り始める今日も。
これが幸せなのだと自分に言い聞かせて。

それでも夢の中で満たされない思いが噴出し、自由に空を飛ぶ自分が見えたりする。
いつも夢の中でも追いかけられているのだけれど・・。

本当に全てを捨ててしまった知人がいる。
1年前に人も羨む大企業の正社員の座と家庭を捨てて、行方不明になってしまった。
遠く旅に出て放浪の末に何かを悟ってくれれば良かったのだけど、
実際の彼は都内から離れられず、しがらみを背負ったまま、自分をひきずったまま、過去に縋り付かれたまま、ネット喫茶で夜を明かし続けた。

1年後金も意欲も失い夜の公園でホームレスになっているところを職務質問の警察官につかまり失われた妻が呼ばれた。

帰るべきではないのに、帰るところなど無いはずなのに帰ってしまった。

人の数だけ人生はあり、私には何も言えない。
周囲の独立した知人の多くは破綻し破産し命まで落としている。
それでも夢は追うべきだろうか。
国の世話にはならない、若い頃独立した者たちの合言葉。
30年後、年老いて力も失い川面に自らの影を映し、つぶやく。
何をしてきたんだろう、一体自分は。

いいんだ、生きてきた事が宝、試し全力でぶつかった事が生きてきた証。
もうこれ以上は問わなくていいのだ。そう思っても振り返ろうとする自分がいる。
悩み続けもがき続け、家族を守ろうとする、それだけでいい。
名前も過去の栄光も一瞬で水の中に溶けて行く。

光がそんな者たちを照らしてくれるだろう。
画像は上野公園から見る天国の階段。
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