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いざなう声

ここのところずっと慌しかった。
義理の父親が亡くなった。私はこの人が好きだった。
2年前に先に逝った義母のことも勿論大好きだった。
自分の親よりも妻の両親が好きだった。

人として素の自分を語りお互いを認め合う、そんな当たり前とも言えることが八王子の妻の実家では出来た。
心が休んだ。疲れた体と心を少しずつ開放できた。
どう、最近?。その一言で救われた。

その義父が亡くなった。
義父が入院したての頃見舞いに八王子に泊り込みで行き、義母の位牌の前で手を合わせる。
途端には義母が飛び出してきて義父を呼んでいる。
「あんた、こっちこっち、ここよ早く来なさい。」
座っている自分の左側の座布団をばんばん叩く。
凄い勢いだ。そうかあの世から呼んでいるというのはこんなにも激しい事があるんだ。
唖然。
言い終わると義母はいきなり祈る私の方を見て、「あなた達は生きなさい。頑張って。」
そして消えていった。義母の命日の直前の夜だった。

翌朝、またしても義母は祈る私の目の前に現れる。
義父の方に向いて
「早くしなさい、こっちよ」と今度は自分の右側の席を叩く。
次いで「こっちもあるわよ」と左側の座布団を叩く。

何で左から右なんだろうと思う。すぐに消えた。

その1週間後に義父は旅立った。義母の命日から10日間が経っていた。義父は精一杯抵抗していたんだろうか。
亡くなるわずか1ヶ月の間に体調は急変していた。
そのちょっと前まで元気に山登りしていたのに。

義父が入院して数日後意識を失ったと妻から連絡を受けた直後に
義父は私の目の前に現れた。
ぼんやりしたブラウン管の白黒の映像のように。
丁度スーパーで買い物が終わりレジの後ろでポリ袋に詰めている時だった。
手に買い物のペットボトルを持ったまま固まる私に
義父は丁寧にお辞儀すると
「今まで有難う世話になったね。元気で生きなさい、娘をよろしく」
最後まで律儀な人だった。
私は誰にも見えない影に向かって、無人のガラス壁に頭を下げた。
ファイル 282-1.jpg

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