記事一覧

5月の風は消えたけど

5月も2週間が過ぎてよりゆっくりと過ごせると思ったのは幻か。
僅か2日間で今月のスケジュールは埋め尽くされ繁忙の只中に突入。
また1年が始まる。仕事漬けの日々、仕事がなく不安と焦燥に焼き尽くされていたあの頃は遠い過去。
今は上野公園の美しさと流れの中に身をおいている。

所属する学会の会員規定に過剰な営業を戒める文章がある。
武士は食わねど高楊枝、である。
私は少しでも時間が空くとダイレクトメールを作り、さっさと送る。見知らぬ誰かの琴線に触れるように。

今回もそれをやった。
お陰で本物の楊枝をくわえ続けている。

古い古い仕来たりである。士業である者は営業活動を慎むべし、特に建築においては、である。
今は歯医者さんから税理士弁護士誰でも営業する。
元々営業活動が苦手な人が士業に参入しているのかもしれない。

私もそうだった、今も人と会うのは苦手、宣伝営業などもっての他である。
でも私にはもう一人の自分がいる
打つ手もなく疲弊し絶望に身を捩る自分を尻目に、まるで恐れを知らないかのように立ち上がる影。

そんな存在に最初は驚いたけど、今はすっかり慣れてしまった。裏と表、2つで1つ。
人は誰でも相反する両面で成り立っている、もう一人のあなたは何時でもそばにいて手をさしのべようとしている。
人格が強く固まった人ほど、その傾向は強いのだろうか。

崩れる世代

子供の頃建築を目指した。

丹下健三の建築を見たから。
そのとき全身を走り抜けた雷は手足を震わせ、夕日の影の中に熱い未来の自分を見た。

あれはまだ11歳の頃。
少年は何も疑わずに夢を追う事に決めた。

大学の建築学科に入り、無謀だと言われながらも建築事務所に入り、いくつもの経験を積み、予め決めていた40歳を前に独立した。
あれから20年が過ぎようとしている。

気がついたら周りに建築をやってる人間がいなくなった。
たった一人で波打ち寄せる孤島に浮かんでいた。
まるで島そのものだ。硬い岩で出来た不屈の島だ。
そして恐ろしいほど世間と隔絶していた。

夢に見た建築はもう目指す者も無く、依頼する者もいない幻になっていた。

一人で戦ってきた。建築を取り巻く社会と、守るべき愛する建築の世界を必死にかばってきた。

もう全て何も無いのだと感じる。

今はもうかつての経験を生かして、別の分野へ進んだ。
誰からも聞いた事がない、ひとりぼんやり年を経てから始めようとしていた分野に否応無く入り込んだ。

最初は手探りで、今は大胆に事業として取り組んでいる。
もう誰とも較べられない自分になっていた。
東京で唯一無二のそして最高の事業になっていく。

たいしたことは無いけれど。

そしてまた夢を見る。

建築デザインをやっている自分を。

何のために若い頃、数千枚のスケッチを描き、
指からどんな形でも紡ぎ出せるように自分を訓練したのだろう。
誰からも教わらずに、一人で世界中の建築を見ながらコピーした。
いつも頭の中は魅惑的な建築空間を歩く事で一杯だった。

朝起きると泣いていた事に気付く。
頭は満足しきっている、男として事業欲を満たしている自分にすっかり。
でも心が泣いている。もう時間が無いんだ。
もう人生の黄昏なんだよ。

髪は薄くなり、頬はたるみ、目は濁り、頑迷さだけが増し、少年のように無邪気に突き進むことはもう出来ない。

残された時間を何に使おう。
生活の傷は余りに大きく深くて、あと何年も選択を許さないみたいだ。
でも何かしたい。
どこか知らない自分に会える場所にもう一度行きたい。

アカデミー!

ようやっと学会の会員になりました。
といっても別の会員に推薦してもらうだけ。

会員証が届くまで時間があるので、無いままでさっさと図書館を利用させてもらった。
金曜日の昼間なのにガ~ラガラ、係員2名、利用客2名、検索用PCは使い放題、検索しては所定の書架に行き本の内容を確認。これを10回以上繰り返す。
気分はもう常連の会員。

昔々、その昔、学生だった頃アカデミーの塊のようなこの場所においそれと足を運ぼうなどとは想像も出来なかった。
恐れ多い場所だったのだ、当時の図書館は。
今じゃネット全盛、中味の無いネットが巾を利かせる。
中味が濃すぎるアカデミーは何処に位置づけられるのだろう。

なんて考えながら仕事の為の調査業務は2時間で終了。
これは一歩だ。

次からは・・・楽しみだ。

不動産バブルは

確か丁度2年前に爆発し、昨年余波で破綻する企業が続出。
もう終わったと思っていた不動産バブル崩壊。

今朝の新聞でanabukiの破綻を知る。
2年前のあの時に他社が一斉に手を引き、凍結し一転売りに転じた時に、
数少なく買いに走った企業だ。

設計施工おまけに販売までする一貫企業なのでコンタクトはとらなかった。
優良企業と自ら謳っていた。

他社がすっかり整理されて中堅企業の多くが消滅し、生まれ変わり
さあこれからだ、と言ってる矢先に、やっぱり逆向きに走ってしまった。

ほんの一部の中堅ではマンションの新規開発を再開している。
大手財閥系以外では数えるほどだけれど。

そこの担当者から初めて企画依頼を受けた。この手の依頼は2年ぶり。
さあ、またやろうぜ!とはいかない。
こちらには深い深い傷がある。信頼を裏切られた、守ってもらうべき時期に
逆に傷つけられた。恨み節。
多くの企業系設計事務所が抱えているジレンマ。

もう分譲マンション設計開発から手を引きたいのだ。
でも経済状況と新規開発の遅れがそれを許してくれそうも無い。

帰りたくない家にしぶしぶ戻るようなもの。

先方とやり取りしているうちに、調子の良い担当者を強く叱ってしまった。
ああもう来ないだろうな。

彼らがみそぎでもしてくれるんだろうか。
日本のどうしようもない必要悪。不動産業。
それに頼る我々。
新しい個々の民間企業への顧客転換はまだ始まったばかりなのだ。

管理建築士

土曜日の今日も仕事だ。
ハイペースで続けている。少し疲労している。
一気に増加したので堪らずに応援を頼んだ。
それでも今月は日曜日以外は休みがとれない。

今までとは少し違うパターンだけど、成果品がどんどん積み上がって行くのは
我ながら見ていても楽しい。

先週、管理建築士の試験講習を受けてきた。
丸一日の缶詰状態。6時間に及ぶ講習の後に、99%が合格する意味の無い試験が行われた。
60分の持ち時間で最初の10分で終えてしまった。残りはひたすら眠った。
硬い椅子の上で猫のように。

今までは管理建築士は資格制ではなかった。
一級建築士取得後、自ら届け出れば受理された。
建築士でさえあれば誰でもすぐになれたのだ。これなくして建築士事務所登録は出来ない。

それが資格授与となった。3年以上の管理経験が必要で、今回のように講習と試験が必須となる。
今まで管理建築士を名乗っていたものは3年以内に受講しないと資格を失う。
失えば建築士事務所の登録が消滅し、営業が出来なくなる。

構造設計一級建築士、設備設計一級建築士と同様に新しく資格を与え、無ければ一定の規模の設計ができない、従来どおりに設計受託できない。
これもアネハの影響だ。黒い蝶が飛んだ時に日本の建築設計業界は大きく変わった。

性善説に基づく建築士制度は崩壊し、性悪説によって規制を受ける事となった。
それも経済が崩壊しているこの時代に施行された!

建築がいかに貴く人間の生活に無くてはならないものかを解いていかねばならない。
古代からあるこの職業。夢を持った若者が来なくては困るのだ。

風と湖と猫

ファイル 25-1.jpg

先週末と今週初め、とある湖(実際は大きな沼)の畔に一日中いた。
マンションの改修工事といってしまえば実も蓋もないが・・。
平地の3倍の風が常に吹いている。雨が強い日には風と共に下から雨粒が吹き上がってくるらしい。
現場にいて次々と来る業者を案内し工事の説明をする。
2日間で11人を案内した。結構楽しいものだ。
新築ならば事務所にいて、図面を渡して終わり。
でも改修工事では事細かに解説して上げなければならない。

風に吹かれ、光にまとわり付かれ、猫の視線に遊ばれ、自分が何処にいるのか分からなくなる。
黒く大きな豹のような生き物が車の隙間を散歩している。堂々と見返してくる。
翼があればこのまま飛びたてるのに、と思いながら屋上で風に身を任せようとする。

ああ時代が変わっていく。ここに再び立つ日が来るとは思ってもみなかった。
あの日、あの時に白い湖の日は終わったはずなのに。
ここで暮らし始めた人達は、あの日から新しい人生を始めた。

終えた者と始めた者とが10年の時を経て呼び合い、ここで更なる時のページを捲ろうとしている。

土地情報は夢の架け橋?

一昨日、昨日と連続して土地情報持込を行った。
これは有力な土地に対して、未だ元気なディベロッパーに買わないかと持ちかける事。
こちらへの見返りは設計契約というパターン。

某破綻寸前のディベロッパー所有物件だ。既に監理ポストに入っている。
価格は1/3。驚く無かれたったの、である。捨て値でも良い、少しでも債権回収したいという債権者の思惑。
小金、中金持ちでも買える値段。それも都心の一等地。

2割3割引きセールではない。なんという時代だろう。
ちなみに私の努力は徒労に終わりそう。さっさと本業に戻りましょう。

一昨日ものすごい夢を見た。

「××印が集まり黒雲を形成している夢」
眠っていると、枕元に金色に光る女性の形が立った。
その胸の辺りから、もやもやとした黒い雲が流れ出た。
うわっ、こりゃ何だ!おもわず目が醒める。
目を覚まし、じっと黒い雲を見る。雲は天井を漂い、窓際のカーテンに近ずき、また戻ってきた。
雲は××のマークで構成されている。何?何のこと。
超リアルドリーム。現実とリンクしている。
おかげで眠れずに何の事か考え続けた。

答えはその日の午後分かった。
先月、忙しさにかまけて、しっかり内容確認をせずに送ってしまった設計図書に依頼者からクレームが来たのだ。

えっ、えっ、という驚きの内容。まるで設計の酔払い運転だ。
頭の中で×の文字がずらっと並ぶ。
といっても図面ではなく表の数字がクレーム対象だったのだが。
なんせ表には別の物件の数字が残っている。ハズカシイ・・。
慌てて、訂正し急いでメールで送る。
初めてだ。こんなに間違えたのは。

先月はちと働きすぎ。仕事は待ってくれない。
無理せずに1日休息すればよかったのだ。反省の1日でした。

コンペ夢の中

オバマが勝利した。きっと何年もたってから、歴史として振り替えるのだろう。
歴史上の大きな変革はその只中ではさほど感じないものだが、今回はひしひしと感じる。

コンペの夢を見る。もっとああしていればと後悔ばかり。
審査中で思ったほど私の案に票が集まらない、ボンボリに灯がともらない・・・。
灯よともれ、と心で念じる。

結果は・・

設計案コンペは、349件の参加申込みがあり、その内、301点の作品提出がありました。
内7点が1次審査通過、と書いてあった。
残念無念、入ってなかった。力抜きすぎ、というご批判もありました。
はい、その通り。
次は頑張るぞ!以上

佐藤美紀雄先生のこと

もう3年になる。佐藤美紀雄先生の訃報を聞いてから。
かつて私の事務所に来られた時には
玄関のドアを開け、風のように1番奥の席に座る。
しっかりしたあごから繰り出される言葉たち。
一つ一つを聞いて心に留めようとした。

分譲マンションはもうダメだから、他の方向に行きなさい。
そう言われて、紹介もして下さった。
あの時で首都圏全体で1万戸の在庫がある、と聞いた。

不動産バブル崩壊後の今は一体何万戸だろうか、と思う。
最大手の大京が700億円の赤字になった。それに次ぐディベロッパーも聞いている。
普通なら倒産しているところだ。

業者がマンションを建てて売る、それ自体は良くも悪くも無い。
建売住宅と同じで需要があるから。

でも全ての集合住宅がその一つの方式になってしまった事に問題がある。
注文住宅があるように、注文マンションが何故作れなかったのか。

個人では無理でも大勢なら出来る事。
それをやりぬく意志。

佐藤美紀雄先生なら、この構造計算偽装、改正建築基準法、不動産バブル、そして崩壊、この一連の負の連鎖に何と言うのだろう。
誰も止めることが出来なかった・・。
先生が亡くなられて以降、この国に辛口の分譲住宅の評論家は出てきただろうか?

ページ移動